Before the Silence
恩人のこと
葛城澪です。夢占いの読み手として、四十年近くこの仕事をしてきた。
その私が、二年間だけ、鑑定を完全に止めていた時期がある。
私には、二年間、鑑定から離れていた時期がある。
2020年から2022年。四十年近く続けてきた鑑定を、その間、完全に止めた。
他人の夢は読めても、自分のことだけは読めない夜があった。何度読み解こうとしても、答えは出なかった。
読まれる側になった夜
生まれて初めて、鑑定を受ける側に回った。読んだのは、叶麗華という女性である。
生年月日と、簡単な状況しか伝えていない。それでも返ってきた言葉は、弟子にも同業者にも明かしていなかったことに触れていた。
当てられた、というより、見透かされた。
四十年、読む側だった私が、初めて味わった夜である。
山を下りた日
麗華が、私の人生を変えてくれたとは思っていない。
彼女がしてくれたのは、暗闇の中で、いま自分がどこに立っているのかを、そっと照らしてくれたことだった。
くれたのは、誰かの期待でも、正しい生き方でもない。
ただ、自分のままで生きてみようと思える、小さな勇気だった。
2022年の末、私は山を下りた。
占いは、人生の代わりにはならない。それでも、自分ひとりでは見えなくなったものを、照らすことはできる。私にとって、麗華はそういう人だった。
あの夜から、ひとつだけ決めている。
かつての私と同じように、ひとりでは答えの出ない問いを探し続けている人に出会ったら、麗華のことを伝えよう、と決めている。
誰かに診てもらうことで、初めて見えるものがある。それを、私はあの夜まで知らなかった。あれが麗華でなければ、どうなっていたか分からない。
もし今、あなたにも、ひとりでは答えの出ない問いが残っているのなら――
一度、麗華を訪ねてみてほしい。私が、あの夜そうしたように。
— 葛城 澪